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2012年3月

2012年3月21日 (水)

インフルエンザのお話 ~ 薬局から ~

 インフルエンザは鼻、咽頭、気管支などを標的臓器とするインフルエンザウィルスによる感染症で、日本では11月から4月頃までの初冬から早春にかけて流行します。例年、12月頃から患者さんが増え始め、2月初め頃にピークを迎えることが多いようです。今年は寒さが厳しかったせいか、3月に入ってからもインフルエンザの発症数が依然多い状態が続いております。

◎ インフルエンザと普通の風邪との違い
 インフルエンザと普通の風邪は、症状に多少の類似性はありますが、病気の種類としては全く違うものです。インフルエンザは普通の風邪に比べて急激に発症し、全身症状が強く、高熱を伴い、気管支炎や肺炎などを合併して重症化することが特徴です。インフルエンザは流行が始まると、乳幼児から高齢者まで膨大な数の人を短期間に巻き込む点も普通の風邪とは異なります。また、死亡率が格段に高いという点でも、普通の風邪とは異なります。

◎ インフルエンザ感染のしくみ
 インフルエンザは、感染患者のくしゃみ、咳などで吐き出される微粒子(飛沫)を介して他の人に感染します。比較的大きい粒子は、近くの患者(約一メートル)から直接周囲の人の呼吸器に侵入してウィルスの感染が起こりますが、ごく細かい粒子は長時間空気中に浮遊し、また、一旦床に落下した大きい粒子でも、冬場乾燥した状態では水分が蒸発し乾燥収縮した飛沫核になり、再び空気中に舞い上がり、これが吸い込まれてウィルスの感染が起こります。
 以上のことから、感染を予防するには、人が多く集まるような所へはなるべく行かないこと(マスクをする!)、感染患者には近づかないこと、外出した後はうがい・手洗いを徹底することが大事です。
 また、風邪症状や発熱などの異常があるときは、早めに受診されることをお勧めいたします。

◎ 抗インフルエンザ薬について
 インフルエンザに対する特異的な治療薬として、タミフルやリレンザ、イナビルなどが知られています。これらの抗インフルエンザ薬は発症後48時間以内に服用することにより、効果を発揮します。
 抗インフルエンザ薬については、精神障害に関する副作用が問題になっています。これまで抗インフルエンザ薬は飲んでも脳内に移行しないとされておりましたが、最近、理研分子イメージング科学研究センターの高島忠之氏らは、アカゲザルを使った陽電子放射型断層撮影法(PET)により,成人脳と幼児脳におけるタミフルの脳内移行性を詳細に比較した結果,タミフルの幼児脳への移行が成人脳より数倍高いことを報告しています。
 しかしながら、これらの結果をもってしても、精神障害が本当に抗インフルエンザ薬による副作用なのかどうかははっきり分かっていないのが現状です。また、インフルエンザウィルスそのものによって起こる症状とも考えられています。
 従って、現段階では10歳未満の小児に飲ませるときには慎重に診察及び観察が必要になりますが、抗インフルエンザ薬はインフルエンザウィルスに直接作用してその増殖を効率的に抑制してくれる良い薬ですので、誤った情報には惑わされないようにして、発熱・悪寒等のインフルエンザの症状が現れたときにはすぐに病院で診察を受け、抗インフルエンザ薬が処方されたときには指示通りにしっかりと吸入または飲むようにしてください。

〈参考文献:SAFE-DI:ガイドラインシリーズ〉